〜移住して奥大山の水洗い珈琲を起業した理由〜
自分は、昭和31年12月生まれ千葉県出身の63歳です。高校、大学、勤務先ともに東京でしたので、人生の大半を関東で過ごし、途中で大阪転勤も経験しながら長いサラリーマン生活を終えました。定年後は特段の計画や展望を持っていた訳ではありませんでしたが、何かしなければいけないと漠然と思っておりました。妻は鳥取県倉吉市出身で、現在は大阪で公務員として働き、2021年3月に定年を迎える予定です。
妻の両親は健在ではあるものの、高齢であり、両親の事が心配なため、定年後は倉吉に戻って両親の近くに住みたいという希望を持っておりました。
妻の実家は倉吉市新町3丁目で大社湯という銭湯を営んでおります。 この銭湯は明治40年開業、鳥取県最古の銭湯で国の登録有形文化財に指定されている程、古い建物です。出雲大社倉吉分院の隣にある銭湯なので出雲大社にあやかり、大社湯と名乗ったと聞いております。
時代の趨勢により、銭湯経営は親の代で終わりにするつもりだと聞いておりましたので、自分は銭湯をカフェにリノベーションし、銭湯の良さを残したままノスタルジックなカフェを経営しようかと、当初は思っておりました。
しかし、サラリーマン時代は日本ハムのフリーズドライ食品部門で常温商品の新商品開発と全国販売を展開していたため、頭の中では常に全国ベースで物事を考えていました。ですから今後、このカフェ1店舗だけの経営ではやや淋しさを感じ、もう少し大きな伸びしろのある事業分野を模索しておりました。
この事で悶々としていた頃にコーヒー焙煎の趣味を持つようになり、自宅でコーヒー焙煎をして楽しんでいたところ、ネットで人生の転機となる情報を得ました。
それは、輸入コーヒー生豆は土埃等で汚れており、生豆を水洗いすると水が泥水になる。というものでした。
自分は、表示されている画像の泥水を見てとても驚き、本当にこれ程までにコーヒー生豆は汚れているのかと半信半疑でした。早速、自宅でボールにコーヒー生豆を入れ、水を入れてかき混ぜてみると、本当に泥水になるのを目の当たりにし、この情報が本当であったことを実感しました。この泥水を見たときに、これからは水洗いしないコーヒーを飲む気がしなくなり、家族にも今までのコーヒーを飲ませたくないと思ったのでした。
コーヒー生豆を水洗いしてから焙煎したコーヒーは、雑味がなくクリアでスッキリした味わいになったのをはっきりと実感できました。コーヒー生豆を水洗いしてから焙煎する業者はすでに世に存在しておりましたが、あまりにも手間がかかりすぎるため、実施しているのは全国でも数える程、極わずかでした。
しかし、土埃を洗い流してコーヒー豆本来の味が味わえる水洗いコーヒーは、広く世に知らしめる価値とその必要があると思うとともに、自分には水洗いコーヒーを世に広める使命を授けられたようにさえ思うようになりました。
そして、妻が鳥取へUターンするのであれば自分も一緒に鳥取へ移住し、水洗いに使用する水は知名度抜群な奥大山の水で洗いたいと思うようになり、商品名も「奥大山の水洗い珈琲豆」と決めました。
しかしそれは、倉吉から奥大山は江府町まで今後20年近く、毎日車を運転して通勤する事を意味するのでした。(つづく)
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