《第9回》

〜焙煎機設置、いよいよ初出荷を迎える〜

2020年12月1日、待ちに待った焙煎機が設置された。自分の背丈よりも大きい6kg焙煎機である。 今まで趣味で1回に200gを焙煎していた者がいきなり6kg焙煎機を使うということは、自転車しか乗った事のない者がいきなりダンプカーを運転するようなものである。

アウベルクラフト

その恐ろしさを感じたのは焙煎機が来てからのことであった。気が付くのが遅すぎた。 まず取り組んだのはテスト焙煎を繰り返し、データを取ることであった。焙煎機に入れるコーヒー豆の投入量と火力の関係や豆温度の上昇カーブを一定にする為にはどのような火力調整をしなければならないか等である。


焙煎機

焙煎機を操作する際のポイントは火力以外にも複数ある。しかしデータを取る際に、要因を同時に二つ変化させてしまうと、どちらの要因で変化したのか分からなくなるため、変化要因を一つずつ変化させながらデータを取らなければならない。この過程は気力と根気のいる仕事であった。


発売に関して、自分の気持ちに2つの思いが混在していた。 1つ目は年内に販売開始したい。2つ目は「今の自分に完璧な焙煎ができるか不安だ、もう少し焙煎データを積み上げてからにしたい。だから納品は来年に延ばしたい」。 「おいしい珈琲を焙煎したい」という思いと裏腹に、自信の無さが同居していた。 しかも12月30日からは大雪情報が出ていたため、これは来年に持ち越した方がいいと思うようになった。大雪情報を言い訳にして納品を先延ばしにしようとしている自分がいた。しかしここへ道の駅奥大山のスタッフの方から電話があった。

「水洗い珈琲を待っているお客様が沢山いらっしゃるので、年内に納めてほしい」自分で売り場を見に行くと、すでに売り場の段取りができている。大量陳列できるスペースが確保されているのを見て、何が何でも年内にお届けしなければと思い、覚悟を決めて焙煎することにした。

当初、午後3時に製品出荷をする予定であったが、全く予定通りに進行していない。しかたなく4時に道の駅奥大山の古海駅長へ電話をして5時半頃にはなんとか納品できるのでそれまで待ってほしいと連絡。快くそれまで待っていただく事となった。 しかし、その5時半近くになっても仕上がらない。 結局、明日の開店前に納品することで了承いただき、夜遅くまで袋詰めすることになった。

そして翌日の朝一番で納品する事ができた。年内に納めることができたので、気持ちの上でもひと区切りがついた。

奥大山の水洗い珈琲

2年以上前から移住と起業を計画し、いろいろな問題を乗り越えての初出荷だったため、感慨深い朝であった。 この朝は、いつものようにご仏壇のお水を替え、いつも通りのお祈りに加え、今日が初出荷である事のご報告と、今日の日を迎える事が出来た事への感謝をしてから家を出た。 商品はグアテマラ、コロンビア、ブラジルの3種類。それぞれ豆のままと粉にしたものを用意した。告知として今まで関係性を築いてきたフェイスブックに、道の駅奥大山で取り扱いが開始された事をお知らせした。その反響は予想より大きく、沢山の方からお祝いのコメントやシェアをしていただき、おかげで沢山の販売につながることが出来た。


フェイスブックの凄いところは、商品を購入していただいた方が商品の感想をすぐにアップして下さる点です。中にはコーヒーカップに注がれたコーヒーとパッケージ写真を掲載してくださる方も何人かいらっしゃり、すぐにお礼のお返事をした。

作り手と買い手がフェイスブックを通して、ほとんどリアルタイムで情報交換ができる点がSNSの魅力である。作り手としてはお客様の反応がダイレクトに、しかもすぐに返ってくるので、SNSが自分にとって追い風となった。情報発信が一方通行でなく、双方向でやり取りができる強みを改めて感じさせてくれた。 今後もSNSの有効活用で注目度と認知度を上げてゆくことにしようと思った(つづく)



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