〜上手くゆかないのは全て自分のせい〜
焙煎所にしたかった場所は、初めて江府町を視察に行った際に案内していただいた旧米原分校です。ここのロケーションがあまりにも良いので、ここを焙煎所にしたかったのですが、水道やトイレが使用できなかったりしたため、旧米原分校は諦めました。 そこでNPO法人こうふのたよりの皆さんに幾つもの空き家バンクの中でお貸しいただける物件はないか、懸命に探していただきましたが、結局見つかりませんでした。
起業に向けてコーヒーインストラクターの資格を取得したり、鳥取県ローカルベンチャー支援補助金の採択までこぎつけ、色々準備を進めてきましたが、肝心の焙煎所拠点がなかなか決まらずに、ついに2020年の8月中旬になってしまいました。
ローカルベンチャー支援補助金の事業期限である2021年2月10日が刻々とせまる中、焙煎拠点が決まらなければ、その他の準備ができたとしても焙煎が出来ないわけであり、起業を断念せざるを得ないという最悪の事態が頭をよぎり、強い危機感で焦りの色が濃くなるばかりでした。まさに進退窮まった状態です。
民間の物件が見つからないので、やはり江府町役場が管理する物件を当たるしかありません。江府町役場との交渉をNPO法人こうふのたよりさんに依頼しておりましたが、なかなか話が進みませんでした。
自分としては移住前までに焙煎拠点が決まっていなければとても怖くて起業は出来ないと思っていましたが、冷静に考えてみると、そんな大切な拠点探しをひと様に探していただくという行為自体が甘かっただけであり、上手くゆかないのは全て自分のせいだと猛省しました。そう思った瞬間から今まで焦っていた気持ちがスッーと消え去り、自分で解決するんだ!という覚悟ができた瞬間でした。
今思えば本当に甘い考えであったと思います。江府町役場という本丸を攻めるのに、ひと様に依頼しているようではダメだとようやく気付くのでした。そもそもひと様に依頼する事自体が間違っていました。本丸を攻めるなら、自ら切り込んでこそ道が開けるものと考えを改め、9月24日に移住を決行しました。焙煎拠点をめぐる役場との交渉は自分が主体となり、その全ての責任が自分にあるという覚悟で役場との交渉を進めました。
もちろん、NPO法人こうふのたよりの皆さんによる、強力な後押しとアドバイスがあったことは言うまでもありません。 9月28日朝9時、NPO法人こうふのたよりの上野事務局長に急遽、役場に電話をしていただき、総務課の方とお会いするセッティングをしていただきました。急の訪問にも関わらず、総務課の3名の方と面談することが出来ました。
その時点でお借りしたいと思う場所は役場が管理する「せせらぎ公園」内の建物でした。そこの使用を許可していただきたくお願いをしました。しかし、せせらぎ公園は蛍の生育や頻繁に各種行事が入っており、使用目的からしても焙煎所としてお貸しする事は現実的でない事を告げられました。さらにここの道路は除雪対象外であることを知らされました。
一方で、役場の方から旧米沢小学校の理科室はどうかとご提案をいただきました。ここであればすでに農業公社と奥大山地美恵が入居しており、ここに焙煎所が入居すれば旧米沢小学校の有効活用につながるとの事でした。しかし、ここならばすぐに貸せるというものではなく、問題点を洗い出し、解決しなければならない点をまとめ、改めて両者と打ち合わせする事となりました。
せせらぎ公園の建物はまだ新しく、山小屋風で趣がありそこからの公園の眺めは素晴らしく、コーヒーを飲みながらこの景色の中でコーヒーを飲めたらきっと来園者の方も喜ぶだろうと思いましたが、実は一方で一抹の不安もありました。それは防犯上の問題と除雪の問題でした。
昼でも人気は少なく、夜になると人気が全く無くなるからです。又、自分ひとりで道路の除雪は無理ですし、大事な焙煎機やパソコンが盗難にあったらそれこそ大問題です。しかし旧米沢小学校はすでに農業公社と奥大山地美恵の2法人が入居しており、防犯上の心配は大幅に減り、道路は除雪対象道路になっているため、防犯と除雪の心配が無くなるので、ここをお借りできるのであれば、むしろせせらぎ公園よりも良い環境になる訳です。すぐに校舎の中を見せていただき、理科室を案内していただきました。
理科室ですから、実験用のガス栓や手洗い用の蛇口が6口もあり、焙煎機の熱源であるプロパンガスがすぐ使用でき、珈琲生豆を水洗いする環境もすでにあります。
まさにこの場所は水洗い珈琲の焙煎所として願ってもないいい条件でした。こうしてみると、せせらぎ公園を含めた多くの物件の中で最もよい物件であることになります。最高の物件を天が差し向けてくださったと思いました。
天は、今まで自分たちで探した物件よりも格段にいい物件にたどりつけるよう、自分たちが探していた物件のお話しを、わざと潰して下さり、ここで焙煎せよと天から導かれたのだという勝手な思いが深まるのでした。(つづく)
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